私たちの目標

 20074月、私たちは、ホームケアエクスパーツ協会を設立しました。高齢者の療養形態が、病院から在宅にシフトし始めた頃でした。ややもすると、安易に再入院に頼りがちなケアの実態がありました。在宅での療養の継続を、優れたケアの提供により支援することで、高齢者や療養者が、自らが生活の主役であることを維持してヒューマンな晩年を過ごせるようにと願ってのことでした。そのためには、在宅療養を支援する方法と優れた専門家の存在が欠かせません。当協会は、訪問看護ステーションしもきたざわを運営し、地域に看護とリハビリのサービスを提供すると同時に、ケアの質の向上を図る研究と専門家育成を目標に活動してまいりました。

 

ところで、ヒューマンな晩年と一言でいっても、これは何を意味するのでしょう。高齢者の多くは病気や障害を抱え、医療や介護の助けを借りて回復を目指しますが、病気がなかったころの状態に戻ることは困難です。むしろ加齢による衰えの進行に抗しがたいのが現実かもしれません。また、年齢による差別(エイジズム)、殊に経済成長を前提にして、生産性が低下した世代を軽視する風潮がありますが、与してよいものでしょうか。このような考えは、年齢、性別等にかかわりなく享受されるべき福祉を阻害します。

 

時代を大きく区分し、縄文、弥生時代 その後の時代の3区分としましょう。それぞれについて、更に、成長、減速、定常の時代の3区分を考えましょう。われわれの住むこの時代は、地球の資源の観点で、「限りない経済成長」の限界に達し、すでに「定常期」に差し掛かっているという見方があります。広井良典(千葉大学法経学部教授)さんのような人は、これから人々は、「定常期」にあっては、単に、経済性のみに着目するのではなく、関係性(人間活動の諸要素間の関係、それぞれにおける充足感=幸福との関係等)を判断の拠りどころにすべきだと主張しています。私も同感です。高齢者のヒューマンな晩年も、関係性をキーワードに拓かれていくでしょう。人とひととの間を結ぶ絆、「つながり」が織りなす関係性の織物: 対話、交流、協働、傾聴、教育、芸術、趣味、娯楽、旅行、スポーツなど多様な分野で進む時間と空間の共有関係、経済的ベネフィットだけではない、心理的ベネフィット、すなわち充足感や満足感の増進が図られるべきでしょう。

 

私たちは、これらの世代に共通して享受されるべきベネフィットが、高齢者にも、療養者にも届くよう、NPOでこそ、場や機会を提供できることだと考えています。これまでに音楽療法、アロマセラピー、心理カウンセリング、講演会、落語会、ピラティスなどを企画・実施してまいりました。これからも地域の方々、ご賛同いただける方々の力や知恵をお借りしながら、活動を広げたいと考えております。

 

私たちの取り組みに皆さまのご支援をぜひお願いしたいと存じます。

 

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特定非営利活動法人 ホームケアエクスパーツ協会
理事長 酒井忠昭